SaaS市場は日々急速な成長をみせ、SaaSベンダー間での競争の激化は目を見張るばかりです。競合よりも優位に立つためには、新しい戦略や方法論が求められていることは言うまでもありません。中でもSaaS間のデータ連携による競合優位性の獲得は近年注目を集めているテーマの一つです。本記事では、SaaS間データ連携がどのようにして競争優位性を生み出すのか、その具体的な実現方法を紹介します。ビジネスをより効率的かつ効果的に展開するための手法として、SaaS間データ連携の重要性を理解し、その実践に役立てていただければ幸いです。SaaS企業にとっての競争優位性とはSaaSを運営する企業は、製品が市場のニーズに適合している状態「PMF(Product-Market Fit)」を目指します。特定の市場に刺さる機能を提供することができれば、顧客獲得が容易になり、高い継続率やリピート率を実現できます。市場のニーズに適合している状態(PMF)を達成するためには、ユーザーからの根強い支持を獲得する必要があります。例えば自社しか提供できない独自性の機能を提供したり、ユーザーコミュニティを設けて製品へのエンゲージメントを高めるなどの要素が考えられます。しかし、SaaS市場では競合製品も数多く存在するため、自社しか提供できない独自性の高い機能を提供することは容易ではありません。市場が成長し続ける中で、機能はすぐに他社に追従され、独自の強みとはならなくなってしまいます。参入障壁を高くするのではなく、競合は今後も増えることを前提に競合との差別化要因を検討しなければなりません。その際には、製品の機能以外にも他社にない強みを持つことが競争優位性を獲得する際に重要になります。このような他社が追随できない大きな強みを作り上げる考え方を「MOAT」と言います。MOATは、日本語で「堀」を意味し、堀は城を守るために周囲を掘り下げて敵から攻められにくくする役割があります。SaaS間データ連携が競争優位性をもたらす理由SaaS市場で競争優位性(MOAT)を構築するためには、他社が提供するSaaSとのSaaS間データ連携をするのが有効な手段の一つです。自社が提供する単純な機能に加えて他社が提供する機能を総合してユーザーに提案を実施できるためです。トータルソリューションとしてユーザーの複雑なビジネス要件に応えることができます。特にエンタープライズ企業に利用してもらうためには、高度で複雑なビジネス要件に対応できるソリューションが求められます。一部門でSaaSを導入しようとした際に、他の部門が別のSaaSを使っており、互いに連携ができないようでは導入が見送られてしまうケースも多々あります。近年、多くの機能を持つ一つのプラットフォームで、他のSaaSとのデータ連携が可能な「コンパウンドSaaS」というジャンルが注目を集めているのもこのためです。コンパウンドSaaSの代表例にはHubspotがあります。Hubspotは1,000以上のSaaSと公式連携を実施し、利用者向けにマーケットプレイスとして公開しています。Hubspotを利用する企業は顧客管理機能やマーケティングなどのコアの機能を利用し、その他の機能は別のSaaSで補います。例えばZoomと連携して商談内容を記録したり、Slackと連携してコミュニケーションツールに商談内容をすぐに同期するなどです。激しい競争が続くSaaS市場において、コンパウンドSaaSのように豊富な外部連携を提供できるプラットフォームが顧客の要求に応え、競合優位性を確保できます。SaaS間データ連携がもたらす具体的な競争優位性とは何かSaaS間データ連携を進めることで、次のような競争優位性を獲得することができます。開発効率を上げられる外部サービスとの連携を強化することで、自社では提供できない機能を外部に委託し、自社のコア機能に特化して開発を進めることができます。例として、会計や人事労務領域のSaaSを提供するfreeeは、「freee オープンプラットフォーム」を構築し、APIエコノミーの形成に取り組んでいます。APIを外部のSaaS企業に公開することで、自社の製品だけでは提供できない機能を外部サービスによって補完しています。システムを柔軟に拡張できるようになる顧客の利用規模が拡大し、製品を利用するシナリオが変更になると、新しい部門で利用しているSaaSとの連携が新たに必要となります。複数のSaaSとのデータ連携実績があれば、これらの変化に柔軟に対応することができます。例えばデータ連携ツールを利用する場合は、複数のシステムのAPIを個別に開発することなく、新しいシステムとの連携もスピーディーに実現できます。顧客に対して高度なビジネス提案が実施できるようになる顧客が求める複雑な要件に対して実現できるソリューションの幅が広がります。時にカスタマーサクセスや専任のコンサルティングチームが提案を行うことで、今まで自社だけのソリューションでは満たすことができなかったビジネスニーズに応えることができるようになりますSaaS間データ連携ツールの導入に際して考慮すべきポイントSaaS間データ連携ツール(iPaaS)を導入すれば異なるSaaS間でのデータ連携をスムーズに進めることができます。ここでは導入に際して考慮すべきポイントについて3つ紹介します。コストトランザクションが膨大になると、SaaS間データ連携ツールの費用が膨大になるケースがあります。例えば連携するアプリの数に応じて料金が変わらないツールを選ぶなど、連携すべきアプリのに応じて正しくサービスを選択する必要があります連携できるアプリの数と種類データ連携ツールは対応しているアダプタの種類も数も違います。100種類以上のアプリと幅広く連携しているツールもあれば、SAPやOracleなどのERPソフトウェアに特化した連携を提供しているツールもあります。頻度高く利用するアプリを中心にした設計を考えるのも良いでしょう。データ連携に習熟したメンバーの確保API開発に通じたエンジニアが業務を担当する場合は問題ありませんが、非エンジニアが業務プロセスの設計を担当する場合もあります。その場合、複数のシステムを横断した連携をうまく設計するのに難儀し、かえって業務を混乱させる可能性があります。また、メンテナンスや管理まで継続的に対応することも視野に入れなければなりません。ある程度のデータの変換・加工処理について知識がなければ利用できないケースも多々あります。まとめSaaS間データ連携は、競争優位性を持つための重要な要素です。データ連携により、顧客ニーズに合わせたサービス提供や、マーケティングキャンペーンの最適化、高度なビジネス分析が可能となります。弊社Datableでは、SaaS for SaaSサービス「datable」をSaaSプロダクトに組み込めるiPaaSとして提供しております。ノーコードで連携が可能なサービスで、「早く、安く、簡単に」データ連携ができるようになります。競合優位性を意識したSaaSのサービス開発にご興味がございましたら、是非下記より詳細資料をご覧ください。