過去、企業は主に1つのデータベースから情報を取得して事足りる時代がありました。保存されているデータは単純で、データを他のデータベースと関連付ける必要はありません。しかし昨今では、多様な情報源からデータを収集することが不可欠です。ソーシャルメディアやIoTデバイスなどが普及するにつれて、データの量と品質は急速に増加しています。複数のデータソースの情報を手動でデータ処理を行うことは簡単な作業ではなく、データの形式を整えて相互に関連付けるための専門的な知識が必要です。この課題を解決するために、データ連携基盤が助けになるかも知れません。そこで今回は、複数のシステムに保存されたデータを取り扱い、正確に関連付けるためのデータ連携基盤について解説します。データの受け渡しに表計算ソフトを使用されている方や、複数のデータソースの情報を統合するのに課題をお持ちの方は、是非記事を参考にしてください。データ連携基盤とはデータ連携基盤とは、異なるシステム間でデータをやり取りする際の基盤となるシステムです。データ連携基盤を導入することで、システム間でのデータ連携をスムーズに行うことができ、業務効率の向上につながります。データ連携基盤は、ファイル転送システムと統合管理ソフトを組み合わせて構築されることが一般的です。ファイル転送システムは、異なるシステム間でデータの送受信を行うためのツールです。一方、統合管理ソフトは、複数のファイル転送ツールを一元的に管理するためのツールです。統合管理ソフトを使うことで、それぞれのシステムに対応した複数のファイル転送ツールを一元的に管理することができます。例えば、システム間の連携処理の一元管理や、転送ログの集約表示、トラブル時の状況確認などが行えます。データ連携にまつわる課題とデータ連携基盤の重要性表計算ソフトなどを活用しデータ連携を手動で行う場合、次に上げられるようなポイントで躓くと言われています。システム間で使われるデータ形式が異なる異なるシステムで生成されたデータは、形式が異なる場合があります。たとえば、システムAはCSVファイルを使用し、システムBはXMLを使用する場合、これらのデータ形式を一元化する必要があります。システム間でデータ品質が違う異なるシステムで生成されたデータは、品質に違いがある場合があります。たとえば、データが欠落している、誤った情報が含まれている、または重複したデータが存在する場合があります。このような場合にはデータ品質を確認し、データクレンジングやデータ標準化などの作業を行う必要があります。扱っているアプリケーションのバージョンが違う異なるシステムで使用されるアプリケーションやプログラムには、バージョンの差異がある場合があります。異なるバージョンのアプリケーションやプログラムで生成されたデータを統合する場合、互換性の問題が発生する可能性があります。都度データを加工し、バージョンを修正する必要性があるなど、多くの作業が必要になることは想像に難くありません。データ連携基盤を構築することで、異なるシステム間のデータを統合し加工をするプロセスを決められたロジックに従い自動化できます。そのため上記のような課題に直面しても同じ作業を繰り返す必要がなく、遥かに効率的に作業を進めることができます。また、ヒューマンエラーを減らし、正確なデータ処理が可能になるため、データ処理に安定性と信頼性がもたらされます。データ連携基盤を構築するメリットデータ連携基盤を構築することにはその他にも以下のようなメリットがあります。システム統合に伴うリスクを最小化できるシステム同士を直接連携する形でシステム連携を行う場合には、システム障害が発生すると業務プロセス自体が停止してしまう恐れがあります。データ連携基盤は、システムのデータに直接手を加えることなくデータの加工・整理・統合を行うため、システム統合のリスクを最小限に抑えることができます。高価なERPを導入するのに比べ低コストで導入できるERPシステムは高性能である反面、導入には膨大なコストがかかることがあります。一方、データ連携基盤は、比較的低コストで導入が可能です。また、システムの規模や機能に合わせて、必要な機能だけを導入することができます。そのため、比較的短期間での導入が可能です。システムのニーズに合わせたカスタマイズが可能データ連携基盤は、システムのニーズに合わせてカスタマイズすることが容易です。そのため、柔軟性の高いシステムを構築することができます。データ連携基盤の実装方法データ連携基盤を構築する手法には、以下の4つが挙げられます。スクラッチ開発スクラッチ開発とは、基盤を一から開発する手法です。開発者は、必要な機能をすべて自分たちで実装することになります。スクラッチ開発は、自由度が高いため、企業独自の要件に合わせたシステムを構築することができます。ただし、開発期間が長く、開発コストが高くなることがあるため、コスト面での検討が必要です。EAIツールの導入EAIツールは、Enterprise Application Integrationの略で、企業内の異なるシステム間でのデータ連携を支援するためのツールです。EAIツールは、ビジュアルプログラミング環境を提供し、開発者がコーディングすることなく、データ連携を実現することができます。ただし、柔軟性が乏しく、カスタマイズが難しい傾向にあります。ETLツールの導入ETLツールは、データウェアハウスやBI(Business Intelligence)システムのためのデータ連携を支援するためのツールです。比較的大きな規模での連携が可能ですが、特定の用途に特化しているため、データ連携全般を管理するのには不向きです。また、リアルタイムでの処理を苦手にしています。ハイブリッド開発ハイブリッド開発とは、スクラッチ開発と既存のツールの組み合わせによる開発手法です。既存のEAIツールやETLツールを活用しながら、独自の要件に合わせたカスタマイズを加えることで、データ連携基盤を構築することができます。ハイブリッド開発は、スクラッチ開発の自由度とEAIツールやETLツールの効率性を両立させることができます。まとめデータ連携基盤は、異なるシステム間でのデータのやり取りを効率化するための重要な仕組みです。データ連携基盤を構築することで、業務プロセスの効率化やデータの正確性の向上など、様々なメリットが得られることがお分かりいただけたかと思います。必要なデータ連携基盤の構築方法には、プログラムの開発やサードパーティーの製品を利用する方法等があります。どちらの方法を選ぶかは、現在置かれている開発体制やコスト面を考慮し、場面に応じて選択してください。今回紹介した内容を踏まえて、データ連携基盤の重要性や構築方法について理解を深め、ビジネスの効率化や新たなビジネスの創出につなげていただければ幸いです。