SaaS製品のAPI連携に携わる皆様は、API実行環境を常に見直し、より効率的かつ安定的なシステム連携の実現に向けて日々模索されているものと思います。常に新しい技術をキャッチアップし、学ぶ姿勢を持てなければ、変化の激しい業界で取り残されてしまいます。今回はAPI設計手法の中でも特に注目を集めている2つのメインスタイル、RESTとGraphQLを深堀りしていきます。REST APIは長い間、ウェブベースのサービス間でデータをやり取りするための標準的な技術でしたが、近年では、GraphQLが対抗馬として頭角を現しています。GraphQLはFacebookによって開発され、その強力な柔軟性と効率性から急速に人気を博しています。これらのAPI設計手法を比較し、それぞれの利点、欠点、最適な使用シナリオを見ていきます。皆様が、新しいAPI設計スタイルであるGraphQLについて理解し、その上適切なスタイルを選択できる手助けになれば幸いです。REST APIとはREST(Representational State Transfer)とは、Webの設計原則に基づいて作られたAPIのスタイルです。データを一意のURI(Uniform Resource Identifier)で表し、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETEなど)を使用してデータに対する操作を行います。REST APIは、状態を保持しないステートレスな構造を特徴としており、クライアントとサーバー間の通信にJSONやXMLなどのデータフォーマットを使用します。APIの接続口(エンドポイント)ごとに異なるURIが存在し、それぞれのエンドポイントに対して操作を行うことができます。GraphQL APIとはGraphQLは、Facebookによって開発されたデータクエリ言語およびAPI実行環境です。GraphQL APIは、データの請求元(クライアント)が必要とするデータを柔軟に取得できるように設計されています。クライアントは、単一のGraphQLエンドポイントに対してクエリを送信し、必要なデータのみを取得することができます。GraphQLは、フロントエンドとバックエンドの間でのデータの取得と更新を効率的に行うことができ、クライアントの要求に合わせてデータをカスタマイズすることも可能です。近年ではFacebook, Github, Airbnbなど、巨大テック企業での導入が相次いでおり、一世を風靡しています。REST APIとGraphQLの主な違いREST APIとGraphQLには主に3つの違いがあります。データ取得の柔軟性 REST APIでは、事前に定義されたエンドポイントごとに必要なデータが提供されます。一方、GraphQL APIでは、クライアントが送信するクエリに基づいて、必要なデータのみを取得できます。ネットワーク効率性REST APIでは、複数のエンドポイントからデータを取得する場合、複数のリクエストを送信する必要があります。一方、GraphQL APIでは、単一のリクエストで必要なデータを一度に取得できます。これにより、トラフィックの削減と応答時間の改善が期待できます。バージョン管理REST APIでは、新しいバージョンのエンドポイントを作成する場合、既存のエンドポイントとの互換性を維持するために、新しいエンドポイントを作成する必要があります。一方、GraphQL APIでは、スキーマの変更やフィールドの追加などを通じて、既存のクエリを柔軟に変更できます。これにより、バージョン管理が容易になります。REST APIの最大の弱点は、目的の情報にアクセスするために沢山のエンドポイントにアクセスしなければならないことです。また、単一のエンドポイントから目的の情報以外の過剰なデータを取得せざるをえないという問題も同時に引き起こされます。これらの問題はオーバーフェッチ・アンダーフェッチと呼ばれます。GraphQLは、オーバーフェッチやアンダーフェッチと言ったREST APIで回避できない問題を解消できる点が、特に画期的であると言われています。ニーズ別おすすめAPIスタイル上記ではGraphQLの新規性を取り上げてきましたが、実際の開発現場では状況に合わせたAPIスタイルを選択する必要があります。REST APIとGraphQLを利用するのにおすすめの場面をお伝えします。REST API利用におすすめの場面データの構造が比較的シンプルな場合APIエンドポイントごとに特定のデータを返すことができるため、開発が直感的です。クライアントが必要とする情報が明確に決まっており、過度な柔軟性が必要ない場合には理想的です。API開発の学習コストも比較的少なくてすみます。ブラウザの標準機能を活用した開発が必要な場合REST APIは、既存のHTTPプロトコルをフル活用することができます。そのため、キャッシュ、セキュリティ、認証に関してブラウザの標準機能を活用して開発を行うことができます。既存で提供される機能を活用した開発を行うのに向いています。GraphQL利用におすすめの場面データのエンドポイントが複数にまたがる場合クライアントが必要とするデータが複数のリソースから取得するものであり、それらの間に関連性や依存性がある場合、GraphQLは力を発揮します。複雑なデータ関係やネストしたデータ構造を柔軟に扱いたい場合に、効率的に扱うことができます。クライアントは1つのクエリで必要なすべての情報を取得でき、効率的な開発を進めることができます。クライアント側で必要な情報のみを提供する場面アプリケーションがクライアント側で実行される場合にGraphQLは特に有用です。クライアントは自分が必要とするデータだけをリクエストできるため、パフォーマンスが改善され、不必要なデータの転送を減らすことができます。これは特にデータ使用量が制限されているモバイルユーザーに対して有効です。まとめ本記事ではRESTとGraph QLという二つのAPI開発手法に焦点をあて、違いを説明してきました。RESTが強力で信頼性が高く、広く採用されている一方で、GraphQLが多くの開癔者や組織から急速に受け入れられている理由がお分かりいただけたのではないでしょうか。REST APIとGraphQL APIは、異なるアプローチでデータの取得と操作を提供します。そのため、GraphQLの技術が注目を集めていたとしても、場面に応じて適切な開発スタイルを選ぶという意識を持つことは重要です。この機会にRest APIを使ったシンプルな開発だけでなく、GraphQLを使って開発の幅を広げてみるのはいかがでしょうか。この記事が皆様のAPI開発の技術の幅を広げることができたら幸いです。