SaaS事業者にとって、顧客の維持や拡大は成長の生命線です。SaaSのビジネスモデルはサブスクリプションであり、収益は継続的な顧客の利用によって成り立っているからです。製品を使ってくださるお客様の解約が相次ぐようになると簡単にビジネスの基盤は崩れ去ります。SaaSビジネスは、顧客が長期的に利用することで売上が上がっていくため解約が相次ぐと安定的な売上が見込めません。また新規顧客を獲得するコストは既存顧客を維持するコストに対して5倍かかると言われており継続的にSaaSビジネスを成長させる上でも既存顧客の維持が重要になります。このように、既存顧客の解約率を下げる取り組みをするのとしないのとでは、ビジネスに雲泥の差が生まれてくるのです。既存顧客への取り組みに注目が集まる中、顧客のサービス活用支援を行うカスタマーサクセスという役割が注目を集めています。本記事では、SaaS事業者におけるカスタマーサクセスとは何か、そしてなぜデータ連携がカスタマーサクセスの実現に重要なのかについて解説します。カスタマーサクセスとは何かカスタマーサクセスとは、顧客が製品やサービスを効果的に利用し、期待した成果を得ることを支援する取り組みです。SaaS型の製品は、月額や年額のサブスクリプションで製品が提供されるため、営業で売ることがゴールではなく、営業で売った後からがビジネスの始まりです。カスタマーサクセスがSaaS型製品に欠かせない役割と言われるのはこのためです。カスタマーサクセスは、顧客のLTV(Life time value)を最大化させることに責任を負います。解約するお客様を1社でも減らすことができるか(カスタマーリテンション)、契約規模をどれだけ維持できるか(レベニューリテンション)、願わくば追加の購入をしていただけるか(ネガティブチャーン)、などの指標をビジネスKPIとして追っていきます。業務は多岐に渡り、お客様の本質的な成功に近づくためにはあらゆる手段を講じていきます。製品サポートにとどまらず、能動的な活用提案や時には専門的なコンサルティングの実施まで幅広く実施していきます。カスタマーサクセスは今までの耳馴染みのある言葉で「カスタマーサポート」と比較されることが多くあります。違いとしては、カスタマーサポートはお客様からの問い合わせに対応することをミッションとしており、顧客の成功に近づく総合的な取り組みであるカスタマーサクセスの一つの手段であると言われています。カスタマーサクセスにおけるデータ連携の重要性カスタマーサクセスがビジネス上の成果を上げていくためには、顧客の使用データを分析し、問題点や改善点を把握することが必要です。顧客に関するデータには以下のようなものがあります。顧客管理ツール(CRM)に保存された顧客データサポートサイトなどウェブページの閲覧データ製品やサービスへの問い合わせやフィードバックに関するデータ顧客とのミーティングでのアジェンダや議事録これらのバラバラに存在しているデータを集約して管理することをデータ連携と言います。データを連携することで、カスタマーサクセスは顧客の興味関心や理解度に合わせた適切なサポートを提供することができます。例えば、ウェブ上のサポートサイトを頻繁に訪れているユーザーにはコミュニティへの誘導を促したり、フィードバックを提供してくれた顧客にはカスタマーサクセスが即時フォローアップに入るなどの取り組みが考えられます。また、顧客の属性や問い合わせの種類が横断的に分析できるようなると、製品開発にも優先順位がつけやすくなります。このように、SaaS事業者が顧客のデータを活用することで、長い目線で顧客の信頼を得やすくなると言えるでしょう。データ連携の具体的な活用方法バラバラに存在するデータを連携する目的の一つとして、ヘルススコアの設計が挙げられます。ヘルススコアとは、顧客の製品への理解度や定着率を数値に表して評価したものです。カスタマーサクセスはヘルスコアに合わせて顧客への取り組みを変えていきます。例えばヘルススコアで取得される数値には以下のようなものが含まれます。プロダクトの活用率:プロダクトへのアクセス頻度やアクセスされるページの深さ、アクセスしているユーザーの数を数値化しますプロダクトへの理解・関心:コミュニティサイトを持っている場合にはアクセス履歴やウェビナーへの参加実績などにより数値化します。また、プロダクトを推してくださるキーマンが存在する場合には点数を加算することもあります。カスタマーサクセスの接触頻度:カスタマーサクセスがミーティングを持つ頻度などで評価します。テックタッチでしか接触が図れない場合は、ご案内したメールの開封率・クリック率なども点数化することがあります。フィードバックの有無:問い合わせは過去あったか、解約懸念があるフィードバックはなかったかなどの指標を点数化します例えば活用率は、製品利用データをリアルタイムで連携し、取得管理できるようにできる必要があります。また、お客様からの問い合わせデータはZendeskやIntercomなどの問い合わせ管理ツールのデータと連動させるということができます。これらのデータを一箇所に集約・連携することで、カスタマーサクセスがお客様との接点で活用できる情報に仕立て上げていきます。データ連携の手段データ連携には以下のような手段があります。データ連携にかかる工数やビジネスサイドのメンバーの編集自由度の高さ、コストなどを総合的に加味する必要があります。カスタマーサクセスマネジメントツールの導入 カスタマーサクセスマネジメントツールは、顧客との関係を管理するためのツールです。カスタマーサクセスで収集すべきデータはツールの中で定義されており、データ連携自体を行う必要がない場合もあります。HiCustomerやGainsightなどが代表的なツールになります。APIを活用したシステム連携 APIを使ってお互いのシステムを連携していきます。API連携に長けたエンジニアが個別にデータ連携を実施し、データ連携を維持していく必要があるため、比較的工数が掛かる手法です。iPaaSを活用したシステム連携 iPaaSは異なるサービスやアプリケーションなどをつなぎ、データの統合・連携を行うサービスです。個別に開発していたAPI連携の工数を削減することができます。BIツールの導入 BIツールは、データを分析し、可視化するためのツールです。一度連携を実施してしまえばビジネスサイドのメンバーが直接データを加工することができるのがメリットです。一方で、導入コストが大きくなる場合があります。まとめ今回の記事では、SaaS事業者にとってのカスタマーサクセスの位置付け、さらにはその取り組みを進める際のデータ連携の重要性についてご説明してきました。既存顧客に関するデータをお互いに連携させることで、顧客の使用状況や課題を把握し、適切なサポートを提供することができます。特にヘルススコアの設計など、カスタマーサクセスが現場で活用する情報にデータを利用していくことが重要です。顧客の長期的な成長を支援するデータドリブンのカスタマーサクセスを構築する一助となれば幸いです。弊社Datableでは、SaaS for SaaSサービス「datable」を提供しております。ノーコードで連携が可能なサービスで、「早く、安く、簡単に」データ連携ができるようになります。GUIで顧客データを連携することにご興味がございましたら、是非下記よりお問い合わせください。