システム開発を取り巻く環境は近年急速に変化しています。特に近年は様々な種類のSaaS(Software as a Service)が登場し、取り扱うシステムの数が急増してきました。また、IoT(Internet of Things)の進展により、ビジネスで扱うデータ量も著しく増加したと言われています。このような状況で、システム間の連携は企業にとって避けて通れない課題となりました。システム間で分散した情報やデータを正しく取り扱わないと、データの整合性を保つことができなくなり、業務の非効率が発生するなど様々な問題が生じてきます。そこで今回の記事では、システム連携の具体的な手法と注意点を解説していきます。システム連携の手法が持つそれぞれの特徴を理解し、正しい連携方法を見つけ出す一助となれば幸いです。システム連携とは異なるシステム同士が情報やデータを共有し、協力して機能を実現することをシステム連携と言います。システム連携によって、業務の自動化や情報共有が可能になり、生産性の向上やコスト削減につながります。例えば、人事管理システムと給与計算システムの連携を考えてみましょう。勤怠情報や給与データを自動的に連携すれば、効率的な給与計算が可能になります。手作業によるミスを削減し、給与計算の精度が向上することでしょう。また、システム間連携によって、より良い顧客サービスを提供することも可能です。例えば、顧客管理システム(CRM)とマーケティングシステムを連携させることで、顧客情報を活用したマーケティングキャンペーンの設計が可能になります。購買履歴に基づいて、関連する商品やサービスのプロモーションメールを送信することもできます。このように、業務の効率化やより良い顧客接点作りという観点から、システム連携は大きなメリットをもたらします。システム連携に必要な要素システム連携を考える際には、以下のような観点を考慮する必要があります。データ連携:複数のシステムで利用されるデータを共有すること処理連携:データ連携に伴ってバッチジョブやワークフローなどの処理の実行アプリケーションの連携:複数システムのアプリケーションの連携セキュリティの連携:データ暗号化、認証やアクセス制御など、セキュリティ対策の連携監視・運用の連携:システムの監視や運用も連携システム連携とデータ連携はよく混同されることが多い言葉ですが、システム連携はデータ連携を含む広い概念であり、データ連携はシステム連携の一部と捉えることができます。システム連携の代表的な方法システム連携の方法としては以下の4つが一般的に採用されています。ファイル連携データベースを直接連携させるのではなく、ファイルのやり取りを通して連携をする方法です。代表的な手法としてFTP(File Transfer Protocol)を用いた連携があり、バッチ処理で大量のデータ送信を行うのに適します。システム同士を直接データベース連携する訳ではないため、既存の業務処理とシステム間連携処理を切り離すことができます。出来るだけ手を加えたくないシステムとの連携はこの手法で行われることが定番になります。一方で、処理速度が遅くなってしまうことからリアルタイムでの連携には不向きと言われています。メッセージキュー連携メッセージキューとは、複数のシステム間でデータを送受信するための仕組みの一つです。送信側からメッセージをキューに積み上げ、受信側がそのキューからメッセージを取り出すことで、非同期的にデータの受け渡しが行えます。メッセージキューを用いることで、通信の信頼性や負荷分散が行えるため、高負荷なシステムの連携に向いています。API連携APIとは、Application Programming Interfaceの略で、プログラム間のデータのやり取りを可能にする仕組みです。APIを用いることで、システムの実装方法に通じていなくとも、システム同士の通信やデータの受け渡しが簡単に行えます。代表的なAPIとしては、REST APIやSOAP APIがあります。クラウドで提供されるSaaS型の製品との連携をする場合には、連携目的に応じた様々なAPIが用意されている場合が多いです。データベース連携システムが過去の技術や仕組みで構築されている場合、ローカルで保存されている情報を直接参照する手法がとられる場合があります。もしくは、システムに残っているデータを一時的にキャッシュし、他のシステムから定期的に参照するという方法もあります。この連携手法では、片方のデータベースに障害が発生すると、データの同期が取れなくなる可能性が高くなります。原則的には非推奨の方法とされています。システム連携する上で気をつける点システム連携やデータ連携を行う際には、いくつかのポイントに注意して進めることが大切です。データのフォーマットを統一する 複数のシステムやデータベースからデータを収集して統合する場合、データのフォーマットを統一することが必要です。異なるフォーマットでデータをやりとりする場合、変換処理が必要になります。そのため、可能な限りデータのフォーマットを統一しておくことが重要です。システム連携のインターフェース確保使いやすく直感的なユーザーインターフェースが求められます。データ活用環境を整えることで、作業者が効率的に作業できるようになります。トラブル対応の体制を整えるシステム連携によって、トラブルが発生することがあります。そのため、トラブル対応の体制を整えておくことが重要です。システム連携に関する問題が発生した場合には、迅速かつ適切な対応を行うことが必要です。監視・運用体制を整える システム連携によって、データの受け渡しが継続的に行われます。そのため、監視・運用体制を整えておくことが重要です。システム連携が正常に行われているかどうかを監視し、問題があれば迅速に対応することが必要です。オンプレミスとクラウドの連携確保 既存のオンプレミスシステムとクラウドサービスをうまく連携させることも重要です。オンプレミスシステムにも対応したEAIツールなどを選ぶことで、双方のデータを連携させ、情報分析や意思決定に役立てることができます。これらのポイントに注意してシステム連携を進めることで、企業内の情報活用が最適化され、スピーディな意思決定が可能になります。まとめシステム連携は、複数のシステムやデータを統合することで、ビジネスプロセスを最適化するための重要な手段です。連携方法には、ファイル連携・メッセージキュー連携・API連携など、様々な方法があることを見てきました。システム連携を行う前には、連携の目的を明確にし、データの整合性やセキュリティを確保することが必要です。今回の記事を参考に、ポイントを押さえたシステム連携を進めてください。